会報「うふふ」第11号オンラインダイジェスト
1996年、97年は、大学を舞台としたセクシュアル・ハラスメント事件(以下、「キャンパス・セクハラ」と略します)の記事が、新聞などに数多く登場した年でした。それだけ、この問題が訴訟などの事件として世の中で表面化することが増えてきているということでしょう。職員が教員に性関係を強要されたとして訴えた事件や、大学院生が指導を受けている教員から執拗に交際を求められたという例、個別指導で教員が女子学生の身体に不必要であるのに手を触れた事件などがありました。
今年、大学の講義で「キャンパス・セクハラ」に触れたときにも、学生の感想に、「高校や中学の部活の先生に、マッサージをするといって身体に触られた。」というものがいくつもありました。大学だけでなく、その他の学校も広く視野に入れて考えていく必要があるのかも知れません。「キャンパス・セクハラ」は普通のセクシュアル・ハラスメントとどこが違うのでしょうか。ふつうセクハラは「対価型」と「環境型」とに分けられます。いずれも職場内のさまざまな権力関係(採用や雇用条件に関わる人事権、職務の割振りに関わる裁量権、一般的な上下関係、など)を利用して、性的なことがらにかかわる言動を通じて行われる嫌がらせです。これらは、働く権利を奪うものであると同時に、圧倒的に女性が被害者になっているという現状では、重大な性差別でもあります。
大学やその他の学校も一種の職場ですから、教職員の間でセクハラが起こることはあり得ますし、そういったセクハラは上でいうものと異なるところはありません。しかし、大学や学校は同時に教育の場でもあり、そこには児童・生徒・学生が存在します。ここ数年注目されている「キャンパス・セクハラ」の中には、教員と学生の間で起こっているものが増えてきています。
教員と学生との間にもやはり、ある種の上下関係があります。一つは、「教える/教えられる」という関係そのものに内在する上下関係です。教員と学生の関係というのは、決して平等な関係ではありません。特に、大学のゼミナール(演習)や研究室での教育・研究は、大学での学生・大学院生の生活の中心であり、卒業研究を行なったり、就職の糸口となるものでもあります。教員と仲が悪くなるということは、指導を受ける学生にとってはたいへん困ることです。教員の言うことに学生が逆らうのはなかなか難しいというのが実際のところです。
こうした状態は、人事権などを上司が握っているような職場と何ら変わりがありません。教員の側が交際を求めたり、学生の身体に触ったり、ということをしても、「嫌だ」と言い出せないようなこともあります。ですから、大学や学校で教員と学生・生徒の間で起こるものも、職場のセクシュアル・ハラスメントと同様に考えていく必要があると言えましょう。
さらに、特に大学の場合には、圧倒的に男性優位であるということも、問題の表面化を抑え、解決を難しくしているところがあります。わずか10%そこそこしか女性教員がいない福島大学が、全国の国公立大学の中では相当上位にランクされてしまうぐらいです。だから、被害を訴え出ても、調査にも消極的だったり、ましてや加害者の処分にはいたらない。だからといって裁判を起こしても、労力もお金もかかるし‥‥ということになれば、泣き寝入りするか、それとも大学をやめるしかなくなってしまいます。こうした状態が好ましいものではないのは明らかです。では、「キャンパス・セクハラ」にどうやって対処していったらよいのでしょうか。
それにはまず、大学(あるいは広く学校)に関わっているすべての人が、この問題を正面から見据える必要があります。まだまだ教員も学生も、この問題を避けて通る傾向があります。(ある大学で、教員の学生へのセクハラを教授会で問題にしようとしたら、「そういう高尚でない問題を教授会の議題にするものではない」という意見すら出てくるというのが現状です!)
そして、各大学できちんと具体的な対応策をとることが大事です。学生や保護者の側から対応を考えるように大学や学校に求めていくことも必要でしょう。ガイドライン作り、被害を受け付ける窓口の設置、学生への広報、教職員の側での研修、など、行なわれるべきことはいくつもあります。(なお、福島大学では、このうちのいくつかを早急に実施すべく、現在努力を重ねているところです。)[註:1998年7月までに、ガイドラインと窓口として学生総合相談室ができています。]
現在、大学院生や大学の教員の有志で、全国ネットワークづくりと、それを通じた情報交換や協力体制づくりを行なっています。東北でも、「キャンパス・セクシュアル・ハラスメント・ネットワーク・東北」ができました(もっとも、「東北」といっても、加入しているメンバーの所属は在仙の数大学と福島大学だけですが)。ホームページを開設して広くこの問題の所在を訴えかけると同時に、ネットワークへの参加を求めているところで、まだまだスタートしたばかりです。学校関係、法律関係、あるいはカウンセラーの方などの広い協力関係がないと、問題を解決していくのは難しいということもだんだんとわかってきました。今回は、まずこうした問題が存在するのだということを知っていただきたく、会報に場所をお借りしました。ネットワーク・東北や全国ネットの詳細については、高橋までお問い合わせ下さい。
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