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WFF第6回学習会「むくわれているか農村の女性」

学習会レポートと参加者の声


 第6回を迎えた学習会は、3月8日福島市市民会館で開催されました。講師は福島大学行政社会学部教授千葉悦子先生。ご専門は社会教育学であり、とりわけ農民・農村教育論に深い研究を重ねておられます。今回は、農家女性をめぐる課題について学びました。

1. 21世紀に向けた農村女性政策の登場

 「新農政プラン」「中長期ビジョン」→農水省は先頃、農業の生産規模の拡大や農村の「生活優先社会」の構築を目指すビジョンを提示した。同ビジョンは、女性を「経営の主体者」として位置づけること、またライフスタイルの転換を求めている。国の政策文書として出されたのは初めてのことであり、そのこと自体は評価できる。しかしプランと現実との乖離は著しい。

2. 日本の農業の主要な担い手は女性

 農家は第2種兼業農家が大半である(→農業だけではやっていけない危機的状況)。就業者は60歳以上の高齢者が担い手である。他方、多くの先進国が農業生産に力を入れている中、日本の食糧自給率は下がり続け、4割を切る状況である。
 こうした厳しい日本農業を支えているのが女性である。農業人口の女性の割合は約6割となっている。
 女性の就業上の位置づけは、男性同様基幹労働力である。女性は、野菜や果樹・畜産分野でとくに役割大である。飼育管理、栽培管理等は経験やこつが必要とされ、作業計画・ 作付計画に始まって農作業全体を様々な要因を加味しながら判断し管理することが必要であり、女性がそれらの担い手となるということは、賃金労働者と違って「自ら判断する」経営者としての地位を確立したとみることができる。そうした女性も徐々に増えている。問題なのは「ただ働き」の状況であり、この状況がなかなか変わっていかない。

3. 農家女性は「ただ働き」

 農家女性の悩み

4. 農家女性が報われないのはなぜ?

 農村の「前近代的」なものの残滓としてだけでは捉えられない。日本は戦後、前近代的なものを拡大再生産ないし利用して近代化を図ってきたのではないか。農地改革によって農民は土地を手にしたが、とりあえず所有者は家長=男性=農協組合員であり、他の家族員が所有主体になる道を積極的には切り開かなかった。改革は男性が女性に優位する家族関係を律するところまでは及ばず、「夫婦」を単位とした近代的家族関係の成立を促す環境整備は十分でなかったといえる。その後、1961年に成立した農業基本法も近代的家族関係の下での近代化農業を標榜したが、女性の家族内地位の向上に結びつく手立ては特になかったといえる。その後、経営移譲を早めるための農業者年金制度や寄与分制度が制度化されるが、それらは男性後継者を優遇するのみで、「嫁」に配慮する手立てはとってこなかった。介護や保育の公共的整備も直系家族を前提とするが故に都市と比較して立ち遅れても許容された。その上、戦後日本政府は農民の低賃金・低農産物価格を強制し、低価格政策を下支えにした工業優先経済政策をとってきた。つまり、女性を含めた農業者が農業を安心してやってこられるような農産物価格が保障されてこなかった。それは、「ものをつくることより消費することに価値がある」とする「農」を否定する論理が蔓延することでもあった。

5. 打開してゆくには─動きはじめた農家女性

 こうした明るい展望も開かれ始めている。農家の人々の意識改革も必要だが、国が農村の前近代的な意識を下支えする「制度」に手を加えなければ前進しないのではないか、と講義は締めくくられた。


[質疑応答]

・「高度経済成長は農民家族を変容させなかった」ことの意味を解説してほしい。
→高度経済成長は、農村にまだ残っていた前近代的な制度や慣習を温存・利用してきたのではないかということ。農基法の下での近代化農政は、商品生産者としての農民に、家族一人一人の労働が正当に評価される仕組みを整えなかった。そのため、家族員のただ働きが温存され、家長に依存する古い構造が残った。

・「大企業のもとで庇護されるサラリーマンとその家族」について解説してほしい。
→サラリーマンや専業主婦は政策的に優遇され企業内福利厚生等充実しているが、農家構成員は十分に保護される形ではなかった。

・農家女性の明るい話題があれば紹介してほしい。
→道東の酪農地帯は「農業近代化の優等生」と呼ばれているが、ある地区では、生活を犠牲にしてきた労働の在り方を改め、経営規模を抑え、余力は生活充実に向ける方法に変えている。畜産の科学的管理の観念を変え夫婦が集う学習会・交流を生んでいる。栃木県の中山間地のあるそば加工組合は平均75歳という高齢者の集まりだが、これまで自分の労働の報酬を手にしたことのなかった女性たちが、そばの再生に取り組み、経営方針を考えることが楽しいと語っている。

・出稼ぎ問題について、残された女性の問題を教えてほしい。
→「父」の不在による、女性のストレスに注目した研究がある。残された母と息子の関係は依存関係に陥りやすく、母が息子離れしないケースが多々見られる。

・それぞれの立場で皆さんに後継者のあるべき姿を聞いてみたい。
→私は、嫁にいきたくないという状況を作ってきたのは農家だと思う。
→私は農家の嫁だが、姑の仕打ち、休日も一銭の自由もなく、涙の日々だった。兼業農家は一番ひどい。外国の人は言葉も不自由で気の毒。農家の嫁は報われない。子どもに農業は絶対やらせたくない。
→私は専業農家の主。花嫁対策委員もしている。現在の動向として、専業、1種といった分析では通用しない「起業農家」「趣味農家」が発生している。「趣味農家」は農家といっても法的根拠はなく、自己責任において、低農薬・有機栽培を行っている。

・新食料法が制定されたが、その位置づけ・方向性を教えてほしい。
→これまで農家はやりたくない人も農業をやってきた。そういう状況を作り出してきたのは農家自身と言うよりは農家をめぐる環境がそうさせてきたのでは。新食料法で日本の健康と食糧を確保し得るのか懸念している。

(文責:片平美紀子)


★参加者の声★

・身近な異国からの農村花嫁
 昨年、知人の農家にタイから21才の花嫁「まゆちゃん」がやって来た。花婿は45才。大農家の本家で、跡取り問題に頭を悩ましていた知人一族もやっと安心といったところ。最近よく見かけるケースである。
 今回の学習会で、農村女性の実態を学び、これからの農村・農家は余程の覚悟で生活、環境、ありようそのものを変えていかなければ諸問題は解決しないだろうと実感した。出席者の一人が言っていた「企業農家」などの試みも大いに実現してほしいところである。
(川崎葉子 双葉町)
 

・女性が農業で輝くには
 近年、国が農業における女性の地位向上の政策を打ち出したことは、言い換えると現状として女性の立場が低く置かれていることをようやく認めたことに等しい。目指そうとする新しいプランを打ち出すのは良いが、そのためにネックとなっている現在の古い制度を修正しないことには政府自身、自己矛盾を産み出してしまうことになるだろう。近時の政情を慨嘆まですることはおこがましいかもしれないが、構想を描く前に現場の足元を見つめ直すことも忘れてはならない。
 上で述べたことが農業という場でも実現された時はじめて、「うつくしまふくしま」という草の根が、ゆるぎない大地に広がり浸透していくのではないか。そう思いたい。
(高萩厚 郡山市 学生)
 

・農村女性の地位向上のために
 各地域が元気になるためには、それぞれの地域を支えている女性の役割りを抜きにして考えることができません。特に本県は、農業県ということもあり、農村女性の持つ役割を正しく評価しなければなりません。
 反面、農村には、これまでの風習、しきたり等が都市部より根強く残っていることも事実です。農村での女性の役割が正しく認識され、そしてしきたり等が一つでも改まっていけば、自ずと都市部の女性の地位が向上していくと考えます。私たちはこれからも力を付けていくためにしっかり学習していくことが大切であると思っています。
(斎藤弘子 福島市)
 

・農家の女の悲しさ
 千葉先生、よくぞここまで掘り下げて下さいました。講義が進むに連れ、身につまされ胸が痛んだ。21世紀間近の今農業は窮地に立たされている(輸入自由化、高齢化、減反、後継者不足)
 夢を抱いて嫁いできたものに、兼業農家、故に休日は農作業(男女とも)田畑は休耕などすれば、戻すのは困難であるから。
 それにしても家長が横座に構えて実権を握っている、女・まして嫁など人間ともおもっていない・・・。アーアーまさに封建主義・・・。30年にもなるというのに部落の人たちは「庄屋の嫁さま」としか呼んではくれない。何なのだ!
(岡崎征子 霊山町)
(編集部註:東北地方では村落のことを日常的に「部落」と呼ぶ習慣が残っています)
 


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