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2005年02月02日
ファンタジーとジェンダー(高橋準)
【 書 名 】ファンタジーとジェンダー
【 著 者 】高橋準
【出 版 社】青弓社
【発 行 年】2004年7月16日
【 価 格 】1600円+税(税込1680円)
【 ISBN 】4-7872-3234-7
【KeyWords】ポピュラー文化、家族、「男装」
【 内 容 】
【コメント】
著者から掲載依頼があったので、Myriel用に少し手を加えておきます。
章立てと内容の概略・取り上げられている作品をまず示します。
はじめに第1章 迷宮の地図を描く―ファンタジーをどう読むか
全体の序論。「ファンタジーとはなにか」にはじまって、日本ファンタジー小史、分析視角、など。第2章 「男装の麗人」たち
「リボンの騎士」「ベルサイユのばら」などのコミック作品から「男装者」の類型を抽出しつつ、「指輪物語」「グイン・サーガ」といった大物ファンタジーの中に登場する「男装者」のイメージを分析。第3章 「戦う女性」たち
第2章を引きついで、「戦う女性」についての分析。
マーセデス・ラッキー「ヴァルデマール年代記」、ひかわ玲子「エフェラ&ジリオラ」、小野不由美「十二国記」、前田珠子「破妖の剣」、など。
ヘイドン「ラプソディ――血脈の子」、ジーン・アウル「大地の子エイラ」などへの言及もあり。第4章 ファンタジーのなかの家族
ローリングの「ハリー・ポッター」シリーズとエディングズ「ベルガリアード物語」を軸に、「親を亡くした子ども(ただし男の子)」をめぐる「家族の物語」を分析するほか、現実の家族と異なるものを描いた作品として、マキャフリー「パーンの竜騎士」、ブラッドリー「ダーコーヴァ年代記」、そして小野不由美の「十二国記」ふたたび。付録 ファンタジー作品紹介
「ハリポタ」、「リンの谷のローワン」、上橋菜穂子「守り人」シリーズ、などの児童文学系から、おとな向けのものとして、松村栄子「紫の砂漠」、ジーン・アウル「大地の子エイラ」、「グイン・サーガ」など。本文の補足なども含む。これだけでなく、よくある真面目なファンタジー評論で無視されてしまうことの多いヤング・アダルト向けについてもとりあげている。秋田禎信「エンジェル・ハウリング」、茅田砂胡「デルフィニア戦記」、荻原規子「西の善き魔女」など。コミックでは中山星香「妖精国の騎士」、垣野内成美「吸血姫美夕」、田村由美「BASARA」。
以下、感想。
もともとは@niftyのフォーラムにアップされた部分などもあるのだが、最初に発言に目を通した時の印象と、単著としてまとめられたものを読んでの印象はかなり違った。特に「男装の麗人」と「戦う女性」を隔てるものは何か、というようなところがそうだろうか。孤立している「男装の麗人」に対して、「戦う女性」は、少なくとも同じ地域や集団の中にちゃんと仲間がいる、というところが、同じジェンダー役割の越境を描いていても違うところだ、という指摘などは、まとめて読んで初めて理解できた。(個人的には、この点に触れている第3章が一番興味深く読めた。)
その流れで出てくる付録の「エンジェル・ハウリング」は、ちょっと印象違うかな、とは思う(まあ、まだ連載途中で書かれた本だし)。でもたしかに、『ドラゴンマガジン』萌えキャラ・ベストスリーに入ってくるフリウ・ハリスコー(「エンジェル・ハウリング」の主人公の一人)視点のパートが雑誌連載されているのに、年齢が高いミズー・ビアンカ(もう一人の主人公)視点のほうは書き下ろしになっていて、そういう「おたく文化」という視点から見れば、興味深い例なのかも知れない。
第1章の、筆者曰く「しちめんどうくさい」という部分はちゃんと読んでいないのだが(申し訳ない)、一つ印象に残ったのは、ジェンダーの問題は、ファンタジーというジャンルの作品が成立するための根幹に位置しているのだ、というくだり。現実とは違った世界を描こうとするハイ・ファンタジーでは、作品世界に合わせて現実とは異なるジェンダー関係を描こうとする場合はもちろん、逆に現実のジェンダー関係をそのまま持ち込む場合にも、今度は作品世界とのミスマッチが問題になる。そうすると、いずれにしても意識的・無意識的に、ファンタジーの書き手は(読み手も)ジェンダーの問題にかかわらざるを得なくなる、というところは、なるほどと思わされた。
個々の作品分析も重要だけど、こうしたジャンル固有の問題を的確に指摘している点も見逃してはいけないところだと感じた。よくポピュラーカルチャーのジェンダー分析で、ステレオタイプ概念を使って作品を切って終わり、というようなものがあったりするが、良質の分析は(斎藤美奈子さんの「紅一点論」もそう)、ジャンルに内在しているロジックを摘出するというところを必ず持っているもので、その点本書もきちんと最低条件を満たしていると思う。
価格もお手ごろでおすすめ。著者に「この値段なら買う。もちろん倍でも買うけど」と言ったら、「じゃあ2冊買って(笑)」と言われてしまいました。すいません1冊でがまんしてください。その分ファンタジー買いますから。(爆)
それと注文を一つ。次にこのテーマで何か書く時は、そろそろ長年懸案の「空色勾玉」論をお願いします。
(written by Ayako TAKAHASHI)
投稿者 june : 2005年02月02日 00:23