朝に行われるミニゴルフについて
菅野泰平
はじめに
朝起きると、家の前の河川敷で年配の方々がミニゴルフをしている事がよくある。ゲートボールではなく、ミニゴルフである。そのような光景は珍しい光景ではないと思う。
ミニゴルフが行われている場所は河川敷の一部である。そのために、この河川敷は洪水のときにはすぐに流されてしまう事がよくある。去年の洪水のときには、ミニゴルフ場全体が石ころだらけに荒れ果ててしまった事があった。後に、ブルドーザーが入って平らにした後に、およそ20人の年配の方々がミニゴルフ場の修復作業をしていた事があった。また、場内の草むしりや隣にある花壇の世話などしている姿がよくみられる。これらのメンテナンスが行われているいることによって、いつでも使える状態になっている。このようなかたちで、自主的に行われているところに興味を持つことになった。
1 調査方法
ミニゴルフ場全体がみわたせ、練習風景を自然なかたちで観察をしたいということで、おもに自宅の中から観察することにした。集合時間、集まる人たちのメンバーを重点的に調査することとした。また、必要におうじてインタビューも行うことにする。
2 フィールドの概要
場所は荒川運動公園の西のはずれ(吾妻山方面)に位置している。普通のグラウンドから2メートルくらいの少しくぼんだ堀の草むらを挟んだところにパットゴルフ場がある。入り口はおもに運動公園の入り口の東側からと道の突き当たりから下ってくる西側とがある。ゴルフ場内には計8つ、直径約10センチメートルの水道のパイプがそのまま埋められており、それがカップ代わりになっている。それらのカップを中心に約1メートルの白線が引かれている。打つ場所を指定しているような白線がところどころに引かれていて、白線が消えても大丈夫なように赤い布の切れ端が2ヶ所づつ釘で打たれている。また、ゴルフ場のわきには休憩所のようなところがあり、そこには青いシートが被せてある浴槽くらいの大きさの物体と古ぼけた丸椅子と折りたたみ椅子が数脚と古い煙草の銘柄が入った灰皿が置かれている。また、グランドを整地する通称『トンボ』も置かれていた。
3 フィールドの風景
1999年9月以降練習の始まる時間が変わったが、ここでは9月以前のおおまかな練習風景を整理して示す。おおよそ次のようである。
5:40くらいになると、腰の曲がった男性(70歳くらい)がミニゴルフ場の東側から現れる。そのまま休憩所と思われるところに行き、シートの下からビニール袋を取り出す。それを持って、鳩に餌をやる。
5:50くらいになると、人が続々と集まってくる。シートの下から取り出した赤い旗(細い竹の棒に赤い布をつけたようなもの)をカップに立てに行く人(1、2人)以外は休憩所でおしゃべりをしている。
6:00頃には、その日の練習に参加するメンバーはほとんど集まっている。
6:05くらいにになると、みんなおしゃべりを止めて、とりあえず練習をはじめる。およそ反時計回りのコースにしたがって2・3の組になって進んでいく。1回りすると必ず休憩所で休む人が出てくる。たいてい皆1度は休憩する。休憩所からあまり離れずに練習する人もいる。
6:30くらいになると、みんな休憩所に一人一人集まってくる。練習には参加せずにお茶を持ってきてみんなにふるまう人がたまに現れる。みんな和んでいる間に、1、2人で旗を回収してくる。ちらほら帰りだす人が出てくる。しかし、たいていの人はずっとおしゃべりをして和んでいる。
6:50くらいになると、みんな椅子をたたんだりして、解散する。東側に帰る人が多い。
[補足]
- 練習に集まる人数は練習時間が変わった9月以降でもほとんど変わらず、平均7、8人くらいであった。最高で17人、最低で3人(レギュラーの男性のみ)であった。前日や夜に雨が降った日には参加する人は少なく、大雨の次の日にはまったく誰も集まらないことがあった。
- 参加する人はだいたい決まっており、男性3人・女性3人はほとんど毎回参加している。
- 練習中に犬の散歩をしている人がミニゴルフ場内を通過することがあったが、みんな特に気にする様子もなく練習を続けていたことがあった。
- 練習中に参加者が連れてきた犬の首輪を取ってやり、犬が飼い主の後をついてまわりながら、練習していることがあった。
- 土日に参加者が多い傾向にある。特に日曜日に多く、スコアをつけている人もいた。
- 今現在8:40頃から練習が始まり、9:30頃には解散している。行われてい事自体はほとんど変わっていない。
- 鳩に餌をやる、旗を立てる、旗を回収する人は決まっていないようだった。
4 フィールドにおける特徴
フィールドワークを行っていく中で、次のことがわかってきた。
- 特に練習の参加が義務付けされていない。
- 旗を立てに行く人、旗を回収する人は特に決まっていない。
- 花壇の世話、草むしりなどは練習時間外にみられ、行っている人は多くて3人で、殆ど1人(レギュラーの男性)でやっている。
5 練習参加者のインタビューから
殆ど毎回練習に参加している女性(70歳くらい)にインタビューを行い、次のことがわかった。
- 参加メンバーは矢剣町会の長寿会の人々で、長寿会にはいるには60歳以上でなければなれない。70歳過ぎが多く、最高齢の方で90歳くらい。毎回参加する人の多くは一人暮しをしている。練習時間などは、練習後のくつろいで話しているときにに決めている。春と秋は6時から7時、夏は6時から7時とだいたい決まっている。今現在は12月初め頃から練習は行われていない。
- 以前は新幹線の線路の下で行っていたが、10年くらい前に市から現在の場所を借り移ってきた。ゲ−トボールをやっていた時もあったが、団体戦のため、いざこざが起きた事もあったので、個人戦のミニゴルフに変更した。
- 近くの清明町や三河町と大会を行っており、市の大会にも参加している。
6 おわりに
過去にミニゴルフ場を荒らしてしまうとの理由で、外部の人や練習参加者の孫に対しても使用するのに目くじらを立てていた事があったそうだ。そのような事もあったが、今ではみんなが開放的になったとのこと。犬の散歩している人が通った時も気にしていなかったのもそのためだろう。
話によると、1周9コースを2回回っているそうである。時には3回回るときもあるらしい。それがいい運動になっているとインタビューで聞く事ができた。
町内会のこととといえばそれまでだが、ミニゴルフ場の整備、花壇の世話などなど自分たちで話し合い、行動しているところが印象として残っている。ただ練習のためだけでなく、健康増進や話がしたいなど理由はいろいろあり、ここでは練習に来なければならないと言う事もないからか、参加者全員純粋に楽しむために来ているという雰囲気が醸し出されているのが感じられた。