電車内での携帯電話の使い方について
五十嵐 佐和
加 藤 絵里
- 動機
近年、携帯電話やPHSが大幅に普及し、大学の構内や街を歩いているときにあらゆる場所でこれらを利用している人の姿が見られる。携帯電話が登場し始めた当初は商品価格も使用料金も高く、サラリーマンの仕事道具としてのイメージが強かったがここ2〜3年で商品価格や使用料金が手ごろな物となるにつれて利用者が増大し、今では欠かすことの出来ないコミュニケーションの手段と考えられるまでになった。
しかしその反面、公共の場での携帯電話の使用に関するマナーの悪さを指摘する声も最近耳にするようになった。その中でも特に電車内でのマナーが問題視され、JRでは車内での携帯電話やPHSの使用を禁止するアナウンスを流している。しかし、今なお電車内での携帯・PHSユーザーは存在し続けている。そこで電車に乗車中、電話がかかってきた場合当事者(対象者)はどのような対応をするのか、また、対応の仕方に年代における違いは生じるのかということについて調査しようと考えた。
- 調査方法
観察者が電車に乗車中、電話がかかってきた対象者がいたら、年齢や服装・対応などについて観察する。
- 調査期間
8月と10月の2ヶ月間
- 調査区間
JR東北本線 藤田駅〜安達駅
- 調査内容
調査の結果、大きく分けて3種類の対応の違いが確認できた。
- 自己中心型
電話を取り、周囲の目などを全く気にせず、まるで自分の部屋にいるかのように大声で話す人たちのこと。
- 配慮型
- 小声派
電話は取るが、周囲に聞こえないほど小声で話す人たちのこと。この場合、周囲の目を気にしていないと受け取れる様子の人と、周囲の目をかなり気にしていると受け取れる様子の人が存在する。
- 移動派
自分の座っていた席を離れ、ドア付近に移動して電話を取った人のこと。
- マナーモード派
電話が鳴るとすぐに切り、その後マナーモードに切り替えるなどした人たちのこと。
- あとで派
自分(対象者)が電車に乗っていることやかけなおすことなどを伝えた上で電話を切る人たちのこと。
- 暇つぶし型
電車内でメールのみを使用していた人たちのこと。
【対応の違いについての具体的事例】
- 自己中心型
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
8月12日(火)
10:34
10:42
[
10:27安達発 下り]観察者は
1番後ろの車両に乗車。4人組の男性(A・B・C・D)は、高校か大学の遠征(サッカーまたはテニス)らしく大荷物を抱えていた。話し声から関西のグループだと思われる。
観察者は南福島で下車。
呼出音が5回ほど鳴り、Aが「もしもしー、もうすぐ着くでー…」と大声で話し始めた。周りを気にしている様子は全く無い。しかし、周りの人履きになるようでチラチラと見ている。
初めの電話を切った後も立て続けに呼出音が鳴り、どれも同じような話をしていた。そのやり取りの間B〜DはAをはやし立てたりして、大騒ぎしていた。周りも呆れたのか、その内気にせず無関心になっていた。
10月4日(月)
18:37
18:44
18:45
18:50
[
18:40福島発 上り]観察者は
3両目に乗車。南福島に到着。観察者の前にベージュの作業着を着た40代ぐらいの男性が立つ。
男性に電話がかかってくる。
観察者は金谷川で下車。
男性は胸のポケットから黒の携帯電話を取りだし「今南福島を出たところ。これから帰るから。」と大きな声で話している。話の内容からして相手は家族だと思われる。
10
月15日(金)21:05
21:07
21:12
21:17
[
21:07福島発 上り]観察者は
2両目に乗車。20代の女性。パーマの髪を一つに結び、ワンピースにチェックのパンツと言う格好で中合の紙袋を持っている。
対象者が金谷川で下車。
発車してすぐに電話がくる。「羽田からJAL乗ってー…」など旅行の話をしているようだ。足を組み、身を乗り出しながらよく通る声で話しているが周りの人に聞かれても気にしない様子である。
対象者はまだ真剣に話している。車内は混んでいるが声のトーンは高いままで、当日の日程についてかなり詳しく説明している。「月曜にまた電話するわー。はいはい、じゃーねー。」と5分以上話して切った。
- 配慮型
1)小声派(A 周囲を気にしていない場合)
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
8月11日(水)
19:06
19:21
19:27
[
19:08福島発 上り]観察者は1両目に乗車。
20台前半ぐらいの女性に電話がかかってくる。
観察者は安達で下車。
いきなり向斜めの席から「もしもしー…」と声が聞こえてきたので観察を開始した。どうやらバイブにしていたらしい。女性は楽しそうに、しかし聞き取れないほど小声で話している。2分後に電話を切ったがずっと携帯を手にしており、周りを気にする様子は無い。
10
月14日(木)21:18
21:25
21:27
[
21:18金谷川発上り]観察者は
2両目に乗車。18〜22歳ぐらいの女性に電話。髪をおさげに死、厚底ブーツにジーンズと言う格好。
観察者は安達で下車。
爪をいじりながら楽しそうに話しているが、話し声はとても小さくこちらには聞こえない。3分ほどして電話を切ると、ため息をつき無表情に下を向いた。
その後も口を動かしながら携帯を操作していた。
1)小声派(B 周囲を気にしている場合)
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
8月22日(日)
19:34
19:43
19:53
[
19:34福島発 上り]福島駅発車。観察者は5両目に乗車している。
金谷川に到着直前、隣の2人がけの席に座っている女性の電話が鳴る。
観察者は安達で下車。
女性は1コールで電話を取り「もしもし、もしもし…」と言っている。窓に体を向け、口元を手で隠しながら小声で話し、用件が終わるとすぐに電話を切りバッグにしまった。
8月29日(日)
14:33
14;48
14:50
14:51
[
14:33藤田発 上り]電車が到着。観察者は
3両目に乗車。観察者の向かい側の女性の電話が鳴る。女性は30代ぐらい。花柄のワンピースに白いサンダルを履き、紙袋を4つ持っている。
福島到着。
電話が鳴るとすぐにバッグから取り出し、電話に出る。周りの目が気になるのか、口に手を当てて下をむいてはなしているが10秒程で切れてしまう。
また電話がかかってくる。女性は前と同じ格好で話している。用件が終わるとすぐに電話を切り、バッグにしまった。それでも周りの様子が気になるらしく、少しうつむいたままだった。
2)移動派
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
8月18日(木)
8:13
8:15
8:17
[
8:13藤田発 上り]電車が到着。観察者は
3両目に乗車。観察者の右隣の女性の電話が鳴る。女性は20代後半〜30代前半ぐらい。グレーの半そでニットに黒のミニスカート、黒のハイヒールという格好で黒のバッグを持っている。
対象者が桑折で下車。
電話が鳴り出すとすぐにバッグから取り出し、ドア付近に歩いていく。
「もしもし、はい、もうすぐ着きます。」と言う会話が聞こえてくる。会話の内容からして、桑折駅で降りると考えられる。電話を切った後も女性はドアのところに立ったままである。
3)マナーモード派
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
8月22日(日)
11:15
11:18
11:29
[
11:15安達発 下り]電車が到着。観察者は
2両目に乗車。大学生ぐらいの男性が観察者の左隣に座る。
するとすぐに電話がかかってくる。
観察者は南福島で下車。
電話が鳴っているがどこにしまったのか分からないらしく、ポケットやバッグなどを探しているうちに切れたしまった。その後バッグから電話を取りだし着信履歴を見たが、電話をかけなおすでもなく、マナーモードに切り替えてポケットにしまった。
10
月18日(月)8:13
8:28
8:31
[
8:13藤田発 上り]電車が到着。観察者は
3両目に乗車。観察者の隣に座っている大学生らしき男性の電話が鳴る。男性はグレーのフリースにジーンズ、スニーカーという格好。
観察者は福島で下車。
電話の着信音が
3回ほど鳴り男性は胸のポケットから電話を取り出す。そしてすぐに電話を切り、マナーモードにすると電話をポケットにしまった。4)あとで派
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
8月7日(土)
22:18
22:22
22:24
22:32
[
22:22福島発 上り]観察者は
4両目に乗車。福島駅を発車。
観察者の向側に座っている2人組の女性の電話が鳴る。電話がきた女性が制服を着ているので2人とも高校生であると考えられる。
対象者が金谷川で下車。
制服を着ている女性の電話の着メロが鳴る。女性はとりあえず電話に出たが「今、電車の中。うん、じゃー。」と言って電話を切った。
10
月16日(土)20:19
20:21
20:29
20:40
[
20:21福島発 上り]観察者は2両目に乗車。
福島駅を発車。
観察者の斜向いの2人がけの席に座っている女性の電話が鳴る。女性は20代前半ぐらいで茶色のスカートにセーター、黒のタイツ姿。
観察者は安達で下車。
着信音が3回鳴り女性は電話に出る。そして「もしもしー、アキ?今電車なのー。うん。ごめん。じゃーね。」と言って電話を切った。
- 暇つぶし型
日付・時間
対象者の特徴
行動・携帯電話への対応
10
月12日(火)21:33
21:36
21:42
21:47
21:51
[
21:36福島発 下り]福島に到着。観察者は金谷川から3両目に乗車している。
福島を発車。
東福島に到着。黒のニットにジーンズ、黒のブーツ、黒のリュックという格好の女子高生が乗車してくる。
観察者・対象者ともに藤田で下車。
東福島を発車してすぐに女子高生にメールがくる。そのメールを見て微笑んでいる。そしてすぐにメールを返した。
2回目のメールがくる。そしてまたすぐに返した。
10
月14日(木)13:35
13:39
13:41
13:47
13:51
13:54
13:56
13:57
14:00
[
13:39福島発 上り]観察者は1両目に乗車。
福島を発車。
A
;制服を着た女子高生
1両目が混んでいる為、観察者は2両目に移動。
B
;制服を着た女子高生
3両目がかなり空いているため観察者は移動。
C
;制服を着た女子高生
4両目に空席を発見し、観察者は移動。
D
;20代ぐらいの女性エンジノVのニットに赤いスカート、赤のバッグという格好。観察者の斜向いに座っている。
観察者は安達で下車。
Aは1人で黙々とメールを入れている様子。入れ終わった後も返事を待っているのか、電話を手にしている。
Bは寝ていたのか下を向いていたが、突然はっと顔を上げポケットから携帯を取り出す。メールがきたらしく、すぐに返事を入れ始めた。
乗換えるとすぐにCを発見。うれしそうな表情でメールを入れ続けている。
バッグの陰になっておりよく見えないが、両手を動かしているので、ポケットボードでメールを打っていると思われる。
- 考察
今回の調査の結果を見ると、自己中心型が14件、配慮型が11件、暇つぶし型が9件だった。また、配慮型について細かく見ると、小声派が6件、移動派が1件、マナーモード派が2件、あとで派が2件であった。つまり、今回の調査の中では自己中心型が最も多く、配慮型(移動派)が最も少なかった。また、対応の仕方に年代における違いは特に見られなかったが、暇つぶし型については若者だけに見られる特徴であると言える。そして、これらの型(派)は1人が1つのものに当てはまるのではなく、暇つぶし型との融合(例えば、自己中心型と暇つぶし型など)が多く見られた。
今回の調査を通して感じたことは、調査の動機を考えたときに比べ調査開始時には電車内で携帯電話やPHSを使用している人が少なくなっていたことだ。しかし、電車内での携帯電話やPHSの使用が無くなるとは思えない。なぜなら、私達自身が電車内で携帯電話を使用しているからである。よく、携帯電話から出る電磁波がペースメーカーや補聴器に悪影響を及ぼすと言われるが、実際にその状況に遭遇してみないと電磁波の恐ろしさが実感できない。だから、電車内で電磁波による大きな事故などが起こり、自分たちがそういった状況に遭遇しない限り、電車内での携帯電話やPHSの使用は完全には無くならないと思う。
ただ、着信音や自己中心型は周囲の人を不快にする可能性が高いので、バイブにしておくとか、小声で話す、デッキへ移動して話すなどということを心がければ電車内での使用はそんなに悪いことだとは思わないというのが私達の結論である。