ジベタリアンの行動について

                      山本奈美子


 ジベタリアンという言葉は世間にほぼ認知されている。
 しかし、ジベタリアンそのものが世間に受け入れられているか、といえばやはり世代間により差があるといえる。

平成11年11月4日毎日新聞の読者の投稿には50代後半の女性がこう書いている。

私達の世代は何かにつけて「みっともないことはするな」といわれて育った。その語源は「見とうもない」つまり他人からは「見たくもない」ことなのだという。ところが最近、この「見たくもない」光景が街中のいたるところで見られる。若い女性の下着と見まがうファッション、乗り物や道路での人目もはばからない抱擁、場所を問わずお尻を地面につけて座り込んでいる若者たち(ジベタリアンというそうな)。目を背けたくなるほうが古いのだろうか。(後省略)

 インターネットによるリサーチでも、ジベタリアンに対する見解は様々だったが、年代が上がるほど否定的であった。中には少年非行の項目に入っている場合もあった。
 若い年代全ての人がジベタることを何とも思わないわけではないだろう。ジベタリアンと呼ばれる人達を観察することで、現代の若者の認識というものが得られるのではないだろうか。


CASE 1 「旅の恥はかき捨て」型

○1999年9月28日 福島駅東口において (16:30〜16:45)

 東西連絡通路を出て、駅東口に出ると、すぐそばの植え込みのところにジベタリアンがすでに生えていた。あまり時間がたっていないのか、周囲はまだ散らかっていない。ジベタっているのは20代女性2名。植え込みの縁に座っている2名(男1、女1)と向かい合って座っている。男性と向かい合ってジベタっている白いTシャツにダボダボのデニム地のパンツの女性(以下A)がすぐ近くのMacで買ってきたのだろうチーズバーガーを食べている。見ていると、まるで座っているのは地べたでは無く、お部屋の絨毯なのという風に、手までついている。(1)
 もう1人のジベタリは、キティちゃんの健康サンダルを履いている(以下B)。Bと植え込みのほうに座っている女性(以下C)は頻繁に携帯にTELが来ているようだ。彼女達と私の間には50代後半くらいのおじさんが2人座っているが、彼女達には関心を寄せていない。むしろ、こんなところでメモっている私の方が見られている気がする。しばらくするとAにTELがきた。他の3人には隠すようにVIVRE方面(北)へ歩いていく。Bが「何なの〜!」と大声(2)でAを追っていく。2人とも大声(2)で笑いながら無邪気に駆けて行く。通行人や、バスを待っている人達が何だろうといったカンジで見ている。Bはあきらめたのか、戻ってくる。あまり時間をおかずに着信音。Bが遠く離れたAに向かって「さとみー、社長から電話ー」と大声で呼びかけて(2)いるが、Aはその場で「出といてー」と大声で答えた。(2)Aはさとみさんというらしい。Bが「社長」からのTELに応対。この時、B、Cがジベタる。Dの男性はずっと上に座ってタバコを吸っている。


 3分ほどしてAが戻ってきてDの左横に座る。A・B・Cの女性3人はかわるがわる場所を交換して座っていた。Aが食べ終えたごみを植え込みの中に投げ捨てた(2)。D、Bはタバコを吸っている。ケイタイ、タバコ、ケイタイという風である。


 B、Aが再びジベタる。両手を後ろにして背もたれのようにして座っている。Aはタバコを吸っていたところにケイタイに着信。@吸っていたタバコを下に置き(ジベタに直接)、電話している。消すのかと思ったら、そのタバコをまた吸い出した。B、C、Dのそれに対する特別な反応は無かった。

 A、B、C、Dはルミネ店内へ入っていく。彼らのいたところは、煙草の吸殻、箱などごみが散らばって(2)いた。

 彼らがそこにジベタっていた時間帯というのは人通りも多く様々な年代の人々が彼らの横を通りすぎていった。しかし、彼らが自分たち以外の視線に動じる様子は無かった。(3)

CASE 1 考察

1.服装の特徴

  女性達の服装は3人とも似たような系統。ダンサー系。
 メイクはしていたが、いわゆるコギャルちっくではなかった。

 一緒の男性については、いたって普通の格好。制服のようにも見えた。

2.特徴的な行動からの分析

 1)下線(1)手をついている/下に置いたタバコを再び吸う

 以上の行動から、彼らは地面に座ること(または地面そのものを)汚いと思っていないことが推測できる。下に置いたタバコを再び吸うという行為は、直接口にするものであり、衛生的に問題があるが、彼らのうち誰も不潔であるという反応をしていない。このことから、ジベタリアンの意識が常識的な衛生観とずれているということがわかる。

 2)下線(2)大声/ごみの散乱

 公衆の面前で多くの人は許される範囲での声量(自分では気づかないだろうが)で話している。大声を使うのは、呼びかけなどではあるが、「個」を見分けられる可能性がある言葉(名前など)を使うのは好まれない。このような一般人の行動は、つまり常識では、他人の目を気にし、他人の迷惑になることを避けようとするのだが、ジベタリアンにはそういった周囲の目を気にするといった習性を持っていないらしい。ごみの散乱も同じく人目を気にしないことに起因するものか。

 3)下線(3)他人の視線に動じない。

 (2)と同様

CASE 1の場合、自分らが楽しければそれでイイといったような自分勝手な行動が目立って観察された。そこで、「旅の恥はかき捨て」型と分類。


CASE 2 「発つ鳥跡を濁さず」型

○1999年9月28日  福島駅東口において (17:05〜17:30)

 ジベタリアンがよく生える地点へ移動しようとしたところ、途中ですれ違った女子高生3人組みが、店を出てすぐの階段に根を下ろす。手には買ったばかりのMacものを持っている。

 生息地は明らかに人通りが多く、すぐに近くのエレベーター横に移動してジベタリ娘。3人ともセミロングのさらさら髪。区別しづらい。

 ピンクのリュックのコ(A)はずっとTELしながらうろうろしている。Aと同じ制服を着ている子が制服姿にも関わらず、タバコを吸い始める。(3)(B)。人目を気にする様子はないが、角に座る。A、Bとは違う制服のコ(C)がBの向いに座る。通路側を背にしている。Cはなかなかバッグを下に置かず、抱え込んだままである。汚く思うからだろうか。ジベタリ娘の行動にしてはアンバランスに見える。

 Aは依然としてうろうろ。私は彼女たちがよく見える位置には居るが、店の中のため(彼女達は外にいる)話題、声量、などほしい情報が得られない状態。Aが私のいるMac店内へ。目が合った気がしていたのでばれたのかと思ったら入り口に備え付けのごみ箱にごみを捨てにきた(2)のだ。Aは仲間のところへ戻ると、Bの隣に正座(1)、ポッキーを食べ始めた。スカートも短い。地面に生足が触れるのは気にしないのだろうか。

 少ししてAとBと同じ制服のコ(D)が合流。シベタらず、しゃがんでいる。

 AとBが立ち上がり、JC(南)のほうへ。Bはバッグを置いたままである。DはCの向い、ちょうどエレベーター前に座る。地下からのエレベーターがつき、扉が開くがDはどかない.おばさんは迷惑そうだ。

Aは足を伸ばして座る。(1)どうやら地面に座っている感覚はないらしい。

 店内に入っていくおじさんが振り返っている。

 AとCがまたどっかへ行った。BとDは話に花が咲いているらしい。Dが足を伸ばして座る。そのうちにBが化粧直しをはじめる。かなり真剣なまなざし。Aが戻ってきて正座、マニキュアをしてきたらしく、B、Dに見せている。また、エレベーターでおばさんが上がってきた。驚きの表情でジベタリ娘を見ていた。

 Aが後ろに手をつき背もたれのようにして座る(1)Aが座る位置を変えようとしたときDがスカートめくり。A、反撃。

 皆それぞれ化粧を直し始める。気がすむと、立ち上がって帰る準備。Mac店内へごみを捨て(2)立ち去る。生息跡は割ときれいだった。

CASE 2 考察

  1. 服装の特徴
  2.  学校帰りのため、皆制服。

  3. 特徴的な行動からの分析
    1. 下線(1)正座、足を伸ばして座る、
    2.  手をついて寄りかかる

       CASE 1と同様にジベタをあまり汚いとは思っていないことの表われ。

    3. 下線(2)ごみ箱にごみを捨てる(ことができる)
    4.  CASE 1とは逆パターン。社会の通念がわかっている。

    5. 下線(3)タバコを吸う。視線に動じない。どかない
    6.  これらの行動は他人の目・世間を気にしていないことから生じるのではないか。特に制服のままでの喫煙行動(つまり未成年の喫煙)には社会的なモラルが欠けている。

 CASE 2の場合、ジベタってはいるが、他のひと達に迷惑をかけているわけではなく、その生態は一般人レベルぐらいである。ごみはごみ箱にという社会のルールもわかっているようであるので、「発つ鳥跡を濁さず」型と分類。


CASE 3 「一匹ジベタリアン」型

(1)Macを出てすぐの看板横に男子高校生と見られるジベタリアンが生えていた。ジベタリ男は暇らしく携帯をしきりに見ている(1)その後、ジベタリ男は逆ナンされるが、気はないらしく、女の子たちは去っていった.5分後、彼女らしい女子高生が来て二人は去った。


(2)Mac看板横にジベタリ娘が生えた。タバコを吸い始める(1)うろうろと人の流れを見ているカンジ。バス到着とともに消える。


(3)電車内にジベタリアン発生。男子高生。つれはいないようだ。電車のドアに背をつけ、足を踏ん張ることでお尻を下につかないようにする。ずっとTELをしていた(1)が、友人が通りかかり、違う車両へ行ってしまった。

CASE 3 考察

  1. 服装の特徴
  2.  (1)、(3)は制服。

  3. 特徴的な行動からの分析
  4. 下線(1)携帯orタバコ

     単独ジベタリアンの場合、ただボーっと座っていることはまれである。私は不審な人ではないですよー、というアピールをしているようだ。

 CASE 3の場合のジベタリアンは、一般人にはほぼ無害。とりあえず単独なので、「一匹ジベタリアン」と命名。


フィールドワークの結果

 多くの人が否定的にとらえるのは、旅の恥はかき捨て型のジベタリアンだろう。このタイプは明らかに迷惑をかけるタイプである。しかし、他人に迷惑をかけなければいいというわけではなく、上の世代にとっってはジベタリアンそのものがみっともないのだろう。

 私のはじめに抱いていたイメージではジベタリ男.ジベタリ娘は、チーマーやコギャルといったカンジだったのだが、普通の人達が座っているのを見て自分が偏った視線で診ていたのだと思った。ジベタリアンを怖いと思っている人達の中には、私と同じように思っている人もいるのだろう。しかし、害にならないタイプもいるのだということも知れば、ジベタリアン観察もなかなか面白いものだ。


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