
フランス家族事情
【 書 名 】フランス家族事情――男と女と子どもの風景――
【 著 者 】浅野素女
【出 版 社】岩波新書
【発 行 年】1995年8月21日
【 価 格 】320円
【 ISBN 】4-00-430404-0
【KeyWords】家族関係、シングル、子ども、不妊
【 内 容 】
第1章 非婚時代
第2章 誰だってシングル
第3章 シングル・マザーは泣かない
第4章 パパ、SOS!
第5章 人工生殖の問いかけるもの
第6章 複合家族
【コメント】
現代フランスの「家族」「結婚」「親子」をめぐる状況のレポートです。
非婚をめぐるコアビタシオン(いわゆる「同棲」)やLATカップル(*)、シング
ル生活、シングル・マザー、父親の位置、出生率低下の中での不妊治療・人工生
殖、そして、複合家族‥‥。さまざまな状況が紹介されます。
これらの状況は、「家族」や「結婚」をめぐる制度が大きく異なる日本とフラ
ンスで、必ずしも同等に論じることができないものではあるでしょう。しかし、
筆者がそこで語りかけるのは、「70年以降、必ずしも〈フェミニズム〉〈女性解
放〉とは銘打たなくても、人々がより自由な性や家族関係を求めてきた、そのい
きついた一つの状況がこれなのだ」ということであるようです。
その状況の中に、絶望を見るのか喜びを見るのか?‥‥それは人それぞれであ
るかもしれません。ただし、「もはや逆行はできない」(筆者あとがき)という
ことだけはたしかでしょう。ならば、ここに描かれているさまざまな例を参照し
ながら、自分なりの生き方を追求すること、そして追求ができる自由とゆとりを
持つことができるように努力し、要求することを、少なくともわたし自身は目指
していきたいと思うのですが。
(*)Living Apart Together の略
高橋 準
(1995/11/29)
遠い島国の日本から眺めるフランスは、あこがれの海外旅行先であったり、文
化やファッションの発祥地として何となく「進んでる」といったイメージが沸い
てくる。しかし、それはフランスのある側面からとらえただけの日本的な感覚で
しかないのである。
実際に、その国で暮らす人々の意識や、思考や物事の価値観を知ることに焦点
をおくとしたら、何からそれを得ることができるだろうか。
『フランス家族事情』は歴史が築いた社会制度が、現在は変動期にあることを
示し、今を生きる男女の意識や思考が結婚や家族のあり方を流動的にし、それぞ
れの手段と方法によって自己表現している姿を映し出したものである。そこには、
日本的な固定観念をあてはめた結婚や家族の結合とは相違する多様性が存在する
ことがわかる。逆を言えば、日本はまだ形式的な制度主義で現代の結婚や家族が
成立しているように思えてしまう。
そして自分の中にある結婚や家族に対する概念は、もしかしたら「日本」とい
う環境によって自然に身についたものではないだろうかと考えさせられた。
世の中には男と女がいて、当然男女が結婚し、子どもが生れ家族が構成され、
世間では「子を持って一人前」などと言ったり、家族を作ることが人生の目的だ
と教えられてきたような気がしてしまった。
この本に登場する男女の関わり方は固定的でも静的存在でもない。それらは、
現実の社会の動向や意識や規範と異なっていても、「自分たちがこれでいい。」
と決めた人間関係の表現の一つにすぎないのである。過去、現在、未来の結婚や
家族を分析し予想した書物はたくさんあると思うが、この本を読み終えた後は、
雑誌や旅行パンフレットなどから得られるイメージとは違うフランスと、フラン
スだけに限定されない現代の男女の変わりゆく家族理論が見えてくるように思え
た。
光家由美子
(96/06/18)
This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)